毒をほおばる日々
お昼は中華。
美味しかったんだけど食べきれず、残りをKくんにたべてもらった。
食べられる量が減った。
一年前くらいから、だんだんと満腹だと感じる量の基準が下がってきた。
これは運動量が減ったからという単純な理由ではないと私は知っている。
たしかに、高校のときは部活漬けの日々を送っていて、ひとつの授業が終わるごとにパンやおにぎりをたべていた。
一日中食べていたのだ。
そして、それは大学に入ってからもやや長引き、一日中食べるわけではないが、たくさん食べないと気がすまなかった。
なんとなくお腹が空いている気がしたし、実際お腹に入れたら入れようとした分入るし。
食べたあとはものすごく胃がふくらんで、妊婦さんのようにあばらの下あたりからぼーんとふくらむような形。
スカートなんかをはいているととてもきつくなった。
チャックをあけてもふくらんだお腹で下がらないスカート。
今考えたらおかしい。
でも、小さな世界にいると、おかしいことに気づけないときもある。
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私は、本当に食べたくて食べていたのだろうか?
味がなんとなく一定以上で、量がたくさんあるお得なものだったらなんでもよかった。
振り返ると、私は、満たされない思い、自分自身にわかってほしかった・気づいてほしかったことをあえて隠すために、たくさん食べていた面もあるような気がする。
なんとなく薄々感じてはいるけど、感じたくない、認識したくないってことをたくさん抱えて、自分をごまかしごまかし…
本当は、やりたいことはこれじゃない。
→でもやるべきことは違うことだから、やらなきゃ。やりたいことをやったら、今みたいに評価してもらえなくなる。
この人のこと、ほんとは嫌いなの。一緒にいたくないの。
→あなたが嫌いっていったら、一気にいろんな人間関係がおかしくなるよ。それに、人を嫌いっていうことはだめなこと。
本当に言いたかったのは、そんなことじゃなかったよ。
→それを言ったらこの子とはどうなってしまうの?嫌われたくないし、嫌いって認めたくないよね。じゃあ、好きでいなきゃ。
なんで認めてくれないの。こんなにやってるのに。
→それはあなたができないからだよ。それなのに表にだしちゃ、みっともないよ。
ほんとはこんなのしたくない。
→稼ぐにはしょうがないじゃない。お金があったらあなたの望みが叶えられるんだから。
つらい。休みたい。
→やるべきことはこーーんなにまだたくさん残ってる。時間がないの。休むのは悪いこと。怠惰な人はダメな人。もっとがんばって。
たくさんの雑音と偽りの自分に惑わされて、自分の本音を必死で気づかないところに押し込める。
気づいちゃったら、押し殺してきた思いが一気にあふれでてきて自分が壊れてしまいそうで怖かった。
気づいちゃったら、「できる自分、優等生の自分」が維持できなくなっちゃう気もした。それによって「価値のない自分」になってしまう気がした。
だから、自分の思いを隠すことは私の生存戦略のようなものだったといえる。
生き残るため。必死だった。
隠し通すため、自分を押し殺しておくために必要なもの。
それは、黄色の割引シールがついた菓子パン。
たくさんの量の食べ物。
「人間、食べてる間は死なねんだ~」
ばあちゃんが教えてくれたライフハック。
当時の自分は、どこが勘違いしながら、そうか!と思って食べ続けていた。
食べることで、なんとか死なないようにしていた。
心が瀕死状態だった。
毒のような甘さで毎日をごまかす。
そうでもしなければ、自分を保っていられない。
そしていつしか、胃袋がどんどん膨れ上がり、どこまでも伸びるように。
自分はたくさん食べることが好きなんだと勘違いし、余分に食べないと気がすまない体質になっていった。
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今は、食べる量がだいぶ減った。
味が最近ようやくわかってきた気がする。
今までは、よほどのものでない限り、なんでもよかったし、おいしいと感じるような体質だった。
しかし今は、自分にも好みの味とかあまり好きじゃない味があることに気がついた。
たぶん、親が、
「食べ物の好き嫌い、人の好き嫌いはよくないこと」
って言ってたことが関係してるのだと思う。
人から、味まで、差別なく受け入れられるように。
それはある意味で正しいが、私は、嫌いな人も、嫌いな味も、嫌いなこともあっていいと思う。
嫌いだから傷つけるというのはおかしいけれど、自分を守るためにさっと離れるのは、大いにあっていいことだと思う。
こんな簡単なことさえ、限られた狭い世界にいると気がつくことができなかった。
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何が変わったのか?
それは私が「こうしなきゃ、こうじゃなきゃ絶対だめだ」と思い込んでいた世界を壊す決意をしたから。
親を中心に、学校で言われてきたこと、周りの友達が言ってたこと、それらでできていた小さな世界から出ていくことを決めた。
自分の思うように生きると決めた。
それだけ。
それだけで、味がわかるようになった。
それだけで、食べたい量、自分に必要な量がわかるようになった。
ほんと、それだけのこと。
それだけなんだけど、、。