人間脱落
「辞めることにしました。もっと休みたいな~遊びたいな~と思ったからです!ーー」
返信する隙を与えずに、30人程いたラインのグループを退会した。
爽快。
卒業する頃には、半分くらいの人数になってるよと聞いていた。
最初の脱落者は、私。
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春から新しいことを学びに、スクールに通っていた。
始めたきっかけは、なんとなく頭に浮かんで、気になって、気になったからには、どこかに行き着く流れなんじゃないかと思ったこと。
そして、それはずいぶん前から憧れていたものに近づけるような「大したスキル」であったこと。
ただなんとなく、やってて面白くない。
好きっぽいのになんでだろ?
いやでも、初めてでなんもわかんないから、わかってくうちに面白くなっていくんじゃないか?
そして、経過ーー
だんだんわかるようになったけど、まだ面白くない…
半年経ち、自分の奥に潜んでたものの影をつかみ始めていた。
で、やっと、わかった。
ああ私、これ、ほんとはやりたいことじゃないや。
好きって思いたかっただけなんだ。と
じゃあなんで好きって思い込まなければならなかったのか。
それは私の恐怖心が元凶だった。
本当の望み通りに生きたら、苦しいんじゃないか?
家族にも、親戚にも見放されて、周りに見下されて、みじめな生活を送ることになるんじゃないか?
私は、本当にしたいようにすることで、不幸になるんじゃないのか?
そんな暗い前提が私の中にあったのだ。
そのシナリオを回避しなければと、私は必死に自分が納得できるような形の提案を、自分の頭にしてきたのだとわかった。
「好きなことだったら、したいんだろ?やるんだろ?」
「じゃあこれを好きだと思いこんじゃえば、世間的にもまあまあかっこはつくし、最悪の事態になって、泥まみれになる心配もないんじゃないの」と。
灰色の血を、脳に送っていたのだ。
濁りきって自分が見えなくなる前に、救いだせてよかった。
自分が何を見たくなくて、自分に嘘をついたのか、叫びながら自分を抉ってみる。
えぐる。すごい言葉だ。えぐる。
血が残る生肉の塊に、ずぼずぼと差し込んでかき回すような。そんな生臭いかんじ。
違和感を感じたら、痛むまま抉る。
この、自分以外の誰にも見えない、とてつもなく痛い行程が、人間に赤い血を通わせていくのだろう。
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高熱が続いた。病院に行っても原因がわからないと言われた。
今までの毒を吐き出してるかのようだった。
どんな言葉で辞めようか迷ったあげく、この人たちには取り繕わず、どうしようもないやつって呆れちゃうくらいの言葉で去るのがぴったりだと思った。
「辞めることにしました。もっと休みたいな~遊びたいな~と思ったからです!」
さらり。
「もっと遊びたいから」なんて、みっともないかんじがいい。
その人たちと交流してる時間は心の底から笑ったし、とても好きになったけど、
さようなら。
「またどこかでご縁があったらすてきですね!」
さらりさらり。
100万ともさようなら。
この社会で濁らずに生きていくには、血生臭くなるほどじゃないといけない。
っていうことは、涼やかな笑みを浮かべるあの人ほど、抉っているのかもしれないね。
えぐる。すごい言葉だ。
抉って、鮮やかな赤い血を流せ。
そして今日も私は、さらりと。
いっちぬーけた!!!