冬は、あたたかな白。
都には雪が降らない。
はいた息が白くならないことが信じられず、私は「はーはーっ」と繰り返し空気に問いかけた。
いつからが冬かわからなくて、
どうやら私は秋に取り残されてしまったみたいだ。
行きどころのなくなった感情をぶら下げ、東京の冬を歩いた。
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私の故郷には雪が降る。
「冬がきた」という知らせが空から届く。
しんしんと積もって、まちの音を吸い込んでいく。
楽しさも悲しさも、やりたかったことも嫌だったことも、泣いても叫んでも、ぜんぶ雪に吸い込まれていく。
そして、しんとする。
すべてを真っ白に戻す。
もさもさと、盛っていたものたちに冬眠の合図を出す。
聞こえるのは、私の長靴が地面の雪をぎゅっと押し込む音だけ。
みんな家に籠る。
普段から人通りが少なかった道から、さらに人が消える。
窓から暖かい光がこぼれる。
なんだか「もういんだよ。これでおしまいにしよう。今はなにもしなくていいよ」と言われてるみたい。
私の心と体も冬眠を始める。
そんな冬が好きだった。